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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



芸大・美大が静かなブームになっています

ここ数年、芸術大学、美術大学がふえています。大学名に、必ずしも「芸術」「美術」がはいらないので一般にはわかりにくいのですが、静かに、しかし着実にそれはふえ続けているのです。

4年前、群馬・高崎に創造学園大学が誕生。ここの創造芸術学部にはデザイン、マンガ、アニメのほか茶道、声優、肉体表現といった専攻コースがあり、棟梁コースも新設の計画があるとか。タレントを多数輩出することで知られる東京の堀越学園が経営する大学で、これら特異なコースも、なるほどとうなずけるものがあります。

2年前に開学した千葉・浦安の了徳寺大学芸術学部。ここには書道、華道のほか「こころのアート」コースというのがあります。また北海道東海大学は今春改組して新たに芸術工学部が発足。「くらしのデザイン学科」に産業デザインや家具のコースなどを設けました。
3年前にマンガ学部を新設した京都精華大学。マンガ学科は珍しくないけど学部はすごい、ということで全国的なニュースになりました。お陰で志願者が殺到、イラストやマンガストーリーのコースの入試競争率は30倍から50倍(08年度)。旧帝大の九州大学(国立)。5年前、芸術工学部ができ、来年度には、「感性大学院」がスタートします。
この多摩地区でも老舗の武蔵野美大、多摩美大のほか町田の玉川大学、桜美林大学に数年前、芸術系の学部ができ、明星大学の青梅キャンパスには3年前新設の造形芸術学部にガーデンデザイン、木材造形、陶芸の専攻があります。
全国的にみると芸術、美術系の学部、学科をもつ4年制大学は111校。これに各都道府県にある国立大学教養学部の教員養成過程―卒業後必ず教師になるという義務はない―の美術専攻を加えると158校。全4年制大学総数の22%に当たります。このほか短大があり、専門学校や芸大予備校が無数にあります。
新設の傾向としては日本画、油彩、彫刻といったファインアート系よりも卒業後の就職可能性の大きいデザイン系が多く、アニメ、マンガ、映像などがそれに次いでいます。
若い世代は、今後50年、60年を生きるわけで、どんな社会が自分たちを待ち受けているのか、彼らなりに本能的に体で感じているものがある。国語や理数の学力は、たしかに低下しているかもしれないけど、美術などの能力では、古い世代に比べ格段に伸びている。本誌の表紙を飾る小学生の作品をみてもそれがよく実証されているように思います。
一方、その若者の受け皿となる大学は、大学全入の時代を迎えて生き残りを賭けた学部再編に懸命です。さらに大卒を採用する企業も、近年、モノづくりの現場でデザイン工学を重視するようになりました。消費者、ユーザーの目のとどかない部品のメーカーでさえデザインの視点が求められるといいます。つなりは、感性社会の到来が世界的な、ひとつの流れになってきた、といえるようです。

中国でも医大に写真学部ができたり、インドにファッション工学の大学ができたり、アジアの大学もアート志向をつよめているという報道がありました。ただ日本の場合、その地殻がちがいます。昔から深層に美意識をもった耽美派の国民で、これまでもっぱら欧米を追うことに身を削ってきました。が、バブルがはじけ、中国が経済大国としてのしあがってきたころから日本人は次第に「日本」にめざめてきた。内なる日本的なるもの、そこに依拠して生きることこそ、このグローバリズムの世紀の王道であることにようやく覚醒しだした。大学の新しい動向をみていると、それが滲み出ていることに気づくのです。