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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



実は、日本全体が「草食」まみれなのです

 昨年の「新語・流行語大賞」に「草食男子」が入賞しました。
「脱官僚」「派遣切り」などを抑えて堂々4位のランク獲得です。
たしかにこの1年余り、新聞、雑誌、テレビの見出しに「草食」が頻出。「男子の草食化でモテ基準が変わった」「『草食カレ』と結婚したい」「背伸びを嫌う草食系男子」…。NHKまでが「平清盛は草食系武士か?」などと悪ノリしていました。
デパートも今年正月には「草食系」「肉食系」の福袋を売り出したとか「弁当男子」
「水筒男子」「日傘男子」といった言葉さえ流通しました。
若者のなかの「草食男子」とは、かっての荒々しさを失い、優しくまじめで他人と争わず、趣味生活が豊か。身の回りに細かく気配りし清潔感がある。反面、失敗したときのトラウマがこわくて女性をくどけない。決断力を欠き、リーダーシップに乏しい。
職場での「草食男子」の評判を女性に聞くと、人当たりがよく協調性もある。他人の話をよく聞き、自分のプライバシーは大事にする。
面白いのはこんな観察。「昼食には弁当を買ってもってくる。職場の近くで買えばいいのに」。「机の上にはテッシュの箱か目薬がおいてある。そのそばにはぬいぐるみも」。やがて化粧品もおくようになるのでしょう。なんだかいじらしい男の子のイメージ。そこで母性本能が動き出し「肉食系女子」が登場。なにかと構いたくなるという風潮が生まれました。
3年前「草食男子」を取り上げたのはコラムニストの深澤真紀さん。翌年、大阪府立大の森岡正博教授が著書「草食男子の恋愛学」を書いて流行に火がつきました。二人とも社会学が専門で、若者の生態観察をしているうちに「女の子にモテない青年たちへの応援歌」を"歌いたくなった"ようです。
ただ二人とも、この種の若者をなぜ、「草食」と形容したのか。その点を明らかにしてはいません。たぶんイメージ的に草食動物とかさなるものがあるからでしょう。
草食獣は、多くが群れをつくり他の種を攻撃しない。そこが協調性を大事にして争いを避ける「草食男子」と相似している。いつも目の前の草を食べることばかりに熱中する草食獣は近眼ですが、「草食男子」も大きな展望をもった人生にはさほど興味がない。また草食動物は、すぐそばに天敵の肉食獣がきていても気づかず、危機管理が甘い。「草食男子」も自分は誠実に生きているのだから他から攻撃されるいわれはないと信じている。深澤さん、森本教授に代わっていえば、「草食男子」と草食動物にはこんな共通点があります。
ただ、二人は「草食」を若者の今日的な姿として矮小化しています。が、外国からは日本人全体が「草食性」の民族にみられている点を指摘すべきでしょう。「草食」ゆえに卓越した長所をもつ一方、オリンピックで誤審があっても泣き寝入り。少女が拉致されても、政府も国民もこれという決定的な解決の手を打てないまま30年も経過。北方の日本の領海で日本の漁船が銃撃されても抗議らしい抗議もできない。
グローバリズムとは恐ろしいもので、そんな日本の「草食的」実像を全世界が次第に知るようになり、これまで日本をアジアの盟主と期待してきたことがどんなに愚かなことだったか、東南アジアなどは近年気づき始めています。
少々、生意気なことをいいましたが、私は10数年前から市民講座で「草食の思想」「日本の基層は草食文化」などを演題としてなんどか講演をしました。だから「草食」については私が元祖のつもり。それに免じてこうした発言をお許しください。