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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



競わず、自己を磨く  特異な日本人のスポーツ・スタンス

 近ごろ、韓国では「日本人は草食系、韓国人は肉食系、北朝鮮は猛獣系」という譬えが流行しているとのことです。しかし、韓国人も猛獣系ではないかと思うことがよくあります。
 フランスの人気映画「タクシー」に、もぐりの白タクをやっている韓国人が出てくる。1台の車を二人が交代で運転して24時間休みなく乗客を拾うのですが、一人が運転中、もう一人はトランクの中で眠っている。これを見たフランスのタクシードライバーが、
 「コリアンの働き方は、いつだって尋常じゃない」 と叫ぶのです。
 そういえば李明博大統領自ら現地に飛んでトップセールスした中東の原発建設は、日仏などの原発先進国を弾き飛ばして受注に成功。ベトナムやブラジルでも新幹線建設で活発な受注活動を展開しています。
 敢然とビッグな目標に挑戦する猛獣、韓国。その猛々しい勢いが今年のバンクーバー・オリンピックで発揮されました。金6個を含むメダル総数14個。金メダルだけでは世界5位、総数で7位。
 これに対して日本は、人口で韓国の2倍以上。出場した選手数も同じく2倍以上。で、メダルは金ゼロ、銀3、銅2の計5個。目標10個の半分の大不振。「スケート選手のユニホームだけが男女とも金色に輝いてすごく素敵でした」という辛辣な皮肉の声も聞かれる、まごうことなき惨敗でした。
 2016年夏季五輪の東京招致では、立候補した4か国中、もっとも国民の招致熱が低かった日本。今回のテレビ視聴率でも最高は浅田真央選手らが出た女子フイギュア・フリーの36.3%。韓国はこの日、平均46%台を記録。日本中が大騒ぎしましたが、韓国との10%差は大きい。
 この五輪の会期中のある日、テレビがたまたま失業問題を取り上げていました。そのなかで、どこかの温泉旅館の経営者が、「新人の従業員30人を採用したところ、体がきついということでどんどん辞め、半年後には一人だけが残るという始末」と話していました。
 職がない。やっとありついた旅館の仕事、しかし、気力がない。体力がない。で、つづかない。また失業者の群れのなかに入っていく。バンクーバーの惨敗と、この話が妙にダブってしまいました。結局、日本人全体の"人間力"ともいうべきパワーが劣化していることが今回の惨敗のベースにある。しかも国会は相も変わらず幼稚な騒ぎを繰り返し、経済も活路が今なお見いだせない。特に鋭い感性を持つ日本人選手たちには、こうした国の混迷と閉塞の雰囲気が反映するのです。
 バンクーバー閉会後、日本選手団の橋本聖子団長が「韓国選手は国を代表する思いも強い、韓国、中国勢の驚異的な伸びの中で見えてきたものがあり、それを研究したい」と語っていました。たしかに韓国研究は必須のテーマですが、ただし、日本の民族性は質的に韓国とは異なることを踏まえておく必要があります。まず基本的に競争意識が低い。学校教育の現場でも児童同士が競うということを避けるようになっている。しかも、これが戦後現象にとどまらない、戦前からの社会風潮でした。在米の日系1世や捕虜になった日本兵を対象にした文化人類学者ルース・ベネディクトの研究書「菊と刀」には、「日本人は従来常に何かしら巧妙な方法を工夫して、極力直接的競争を避けるようにしてきた」
「日本人は、父親と息子が競争で自家用車を使用し、競争で母親もしくは妻の注意をひきあうアメリカ人の家庭を見て、驚き呆れる」 と書いています。
 競うのではなく、自己を磨く。世界でも特異なこのスタンスを考慮しないで、真に草食日本のスポーツ振興を図ることはできません。