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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



枯渇に向かう世界の水資源   日本の省水技術の出番です

宇宙から見ると、地球は赤黒い土色ではなく、ブルー。地表の80%が海面だから当然ですが、そこで「地球」ではなく「水球」というのが正しいと主張する人がいます。この流儀でいくと、人間も「水人」になってしまう。なぜなら「成人男性の体重のほぼ60%、成人女性ではほぼ55%が水」(佐藤方彦・元九州芸術工科大学教授=人間工学専攻)だから。
その地球に存在する水の97.5%は海水で、残り2.5%が淡水。しかも人間が利用している水は0.5%にしか過ぎない。この微量な水をめぐって21世紀の人類社会は争奪戦に入っていこうとしている、といわれています。
というのも地球の温暖化や異常気象などの影響で、水資源がどんどん減少の方向に向かっている。たとえば中国の黄河では水が河口に届かない「断流」がたびたび発生。中央アジアのウズベキスタンにあるアラル海はみる影もないほど干上がってしまった。一方、地下水の水位低下もひどく、それを大量に汲み上げる米国の穀倉地帯ばかりか、中国やインドのような揚水ポンプが普及していない農業地帯でも毎年1〜3メートル、地下水位が下がって深刻な問題になっています。
古代、農耕をはじめたときから人類は大量の水に頼ってきました。水なくして農業はなりたたない。とくに稲作は水田が基本です。だから縄文人は日本列島に稲作が入ってくることに反対でした。縄文中期(5000〜4000年前)ごろには、すでに大陸で稲作がおこなわれていることを知っていたようです。しかし縄文人は田をつくるために森を破壊し、水を汚すことに数千年も抵抗した。お陰で日本列島は世界一の農耕後進国になりました。
「縄文人は1万年以上もドングリ食べて、何の進歩もしなかった。信じられない」 などという外国人がいますが、自然を水を清らかなものとして信仰の対象にした縄文人の心は現代のわれわれ日本人の尾てい骨に残っているのです。
それかあらぬか、現代日本の浄水技術は世界のトップクラス。海水を淡水化する濾過膜では世界シェアの50%を占めている。7年前、シンガポールの首相が国民を前にしてこれら濾過膜で浄化した下水を飲んでみせたことがありまた。汚水さえも飲用可能にする高精度の濾過膜がすでに出回っているのです。
また地下に埋設した水道管の漏水率。イタリアでは利用者の蛇口に届く水は52%で、48%は途中で漏れてしまう。りっぱな上下水道をつくった古代ローマ人が泣きベソをかくような話です。のんきなイタリア人は別格ですが、世界の平均漏水率は約20%。これに対して日本は全国平均で約7%、東京都に限ると3%。突出した成績といっていいでしょう。
じつは日本でも埋設後30年、40年の老朽水道管だらけ。それでもこの漏水率をキープしているのは、都市騒音がおさまった深夜に出動する“ふくろう部隊”のお陰です。地中の水漏れの、ほんのわずかな音を“聴診器”で聞き取る作業に励む人たち。鉄道の終電から始発までの間、活躍する保線マンと同じ、人知れぬ貢献を休むことなくつづけているのです。しかしこの仕事も、近年は人材難。嫌われる深夜作業の上に、ある才能が求められるからです。
そこで登場しました、対漏水ロボット。水が流れている水道管内を照明をつけてプロペラですすみ、先端のカメラでとらえた管の毀損個所を地上のモニターに伝えるのです。今春、市場にお目見えしたばかり。総延長61万キロの全国の水道管で今後、このロボが大車輪の働きをみせてくれるはず。またイタリアはじめ世界に進出する日も近いでしょう。