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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



日本のイメージを料理人が上げ、政治家が潰してる 


 東京とニューヨークの人口は、どちらも約850万前後。パリは220万で、東京、ニューヨークの四分の一。ところがレストランなど飲食店の数となると東京が約16万。ニューヨークが約2万5千。パリ1万3千。東京が桁ちがいに多い。
数も多いが、食の質も高いのが東京です。それをパリに本部を置く「ミシュランガイド」が証明してくれました。
レストランなどのランクづけで世界的に有名な「ミシュランガイド」の2011年版が、最高の料理を提供する「三つ星」の店が東京には14あると報じました。「二つ星「一つ星」を加えた総数では240。これは世界一の美食都市とされるパリを大きく上回り、数の上では東京、京都、パリ、大阪、ニューヨークの順になるというのです。店が16万もある東京だから、星つきの店が多いのは当然という見方もあるでしょうが、同ガイドのジャンリュック・ナレ社長は次のように話しています。
「日本のレストランは、すし、ウナギ、懐石、天ぷら、焼き鳥、ステーキなど分野別の料理がしっかり確立され、それぞれの分野で職人が素材選びから調理まで、絶えず上へ上へと技術を磨き上げて専門性を発揮している」「しかも数世代、数百年かけて伝えられてきた技術と伝統は誰も追いつけないだろう」
この発言には、日本の料理人が孜孜として世界に卓越した料理を芸術にまで高めたことへの深い敬意と感動があるのが分かります。
ここ数年、日本食の評価は海外でも高まるばかり。アメリカのテレビドラマをみていると、しばしば「おい、今夜は日本料理で豪勢にいこうぜ!」などといった会話がでてくる。日本レストランの落ち着いた雰囲気のなかで、すしか懐石料理を楽しむのがひとつのステータスになっているのです。
全米の日本食レストランが1万店を越えたと、なにかの雑誌で読んだ記憶がありますが、あのロシアの地方都市にすら回転ずしやすしバーはめずらしくないといいます。また、すし人気とともに、しょうゆが"テリヤキソース"と呼ばれて欧米に浸透し、最近では、すしに欠かせないワサビまで注目され、ドイツではスープに使い、アメリカではドレッシングとなり、ロシアではパンに塗っている。
18世紀末のフランス革命の折り、宮廷や貴族の館で働いていたシェフたち約3千人も追われました。「坊主憎くけりゃ袈裟までも…」で、王政倒しに躍起の革命派はシェフまで捕えて処刑しようとした。ために彼らは国外に逃れ、欧州各地や北米に散ったのです。その彼らは亡命先で、それこそ長年黙々と鍛えた1級の腕前をふるった。これによってフランス料理は世界のブランドとして確固たる地位を築いた。亡命シェフたちは画壇のあまたの天才たちとともに「芸術の国フランス」「文化の国家フランス」のイメージをつくったのです。
いま日本の料理人たちが、かってのフランスのシェフよろしく世界各国に進出して、この国のイメージアップに大きく貢献してる。アニメやマンガ、ファッションなどとともに「クール・ジャパン」の一翼を担っているのです。
最近、米国のグラミー賞を日本人4人が同時受賞したり、ノーベル賞の受賞者が続々出ているのも、粋で清雅な「クール・ジャパン」のイメージが下支えになっているのではないか。こういうとらえ方にも一理あるように思われます。
だが、せっかく料理人たちが頑張って日本の国の格を上げている一方で、政治家たちはせっせと格下げに努めている。首脳会談でわが国の首相はメモを棒読みして世界の嘲笑を買ったりする。そういう世界5流、6流の政治家が料亭やホテルで超一流の料理人がつくる料理を食べまくる。この国は、まったくおかしな国ですね。