ほのぼのマイタウン 街・家族の活性化を支援します 小平市・東久留米市・清瀬市・東村山市・西東京市を結ぶ手作り情報マガジン

> エッセイ・自分たち探し 目次


もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



「世界に貢献する復興」というコンセプトがほしかった

   
やはり「世界の中の復興」といった視点を欠き、大局観のない日本が露呈した感じがします。
 なんのことかというと、例の6月25日菅直人首相に提出された東日本大震災復興構想会議(五百旗頭真議長)の答申書「復興への提言」のことです。
 答申は首相からの諮問をうけて検討部会を含め総勢35人の委員が2ヶ月半にわたって審議した末、まとめたもので、4章構成。その骨子は自然災害による被害を極力小さくする「減災」という考え方を基本とした住居の高台移転や「復興増税」の断行、縦割り行政の規制を越えた「特区」の設置、「再生可能なエネルギー」の導入促進などを求めています。
 で、最後の第4章のなかに「世界に開かれた復興」という1節があります。しかしこれが少々問題で、「日本ブランドの信頼回復」「魅力的な投資環境の整備」「外国人の受け入れ促進」などを強調していますが、よく考えてみるとこれらはみな内向き。「世界に開かれた…」というのであれば、外に向かって積極果敢に貢献していく姿勢が必要でしょう。たとえば、いまや国際語となったツナミを冠した「世界ツナミセンター」を新設して海外からも研究者を集め、自然災害の多角的な分析やシミュレーションと取り組み、その成果を逐次世界に発信する。また被災地の復興のプロセスを情報化して各国に伝える「東北広報センター」を機能させる。世界に対する部品供給ひとつとっても、世界はいま、東北復興の推移や日本人の行動に関する情報を求めているのです。今回の震災に際して、じつに150カ国が支援をしてくれました。その厚意に報いるためにも、情報提供は当然、われわれがとるべき措置ではないでしょうか。
 「震災後、世界150カ国が日本に支援表明したことを思い起こしてほしい。日本は今後も国際社会でリーダーになれるという証しだ」
といってくれたのはアーミテージ元米国務副長官。この150カ国のなかには1日1ドル以下で暮らす人々を抱える最貧国がいくつも入っています。そうかと思うと3億円の支援を拠出した中国が、台湾からの義援金160億円と合算して
「われわれは163億円を出した」と主張するケースもある。
 いずれにせよ、150カ国というのは大変な数字で、世界の側が驚いた。「日本って、そんなに人気のある国?」。さっきのアーミテージ副長官の言葉の裏にも、そうした驚きがかくされています。
 オバマ大統領は「日本の震災に胸が張り裂ける思いだ」といい、米国のトップとして史上初めてワシントンの日本大使館におもむき、被災死した犠牲者の追悼と日本人の激励のための記帳をしました。
 「助けを必要とする偉大な同盟国の一つと、米国は常に共にあるのだと知ってください。国民の強さと英知によって日本は復興し、これまでよりさらに強い国になるのだと我々には分かっています…」
 こういう場合、「政府と国民」と書くのがふつうだが、大統領は「国民」とだけしか記帳していない。この意味を菅首相はしっかり吟味すべきでしょう。
 その菅首相は、支援してくれた国への謝意表明を怠っていると批判され、あわてて主要国のメディアに感謝広告を掲載した。この感度の鈍さは特筆に値します。
 総じて、日本人は発信力に乏しい。だいたい政府に専任の報道官がいない。多忙な官房長官では広報能力に限界がある。国や政党が広報の適材を育成し、国民との、また世界の人々との絆を深める配慮をすべきです。
 復興構想会議は、こうした日本の弱点を指摘して「世界のための復興」というコンセプト(理念)を打ち出し、震災を契機に「訴求力のある日本」をつくる答申をしてほしかったと思います。