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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



在来の動植物が悲鳴をあげて日本人に警告している

   
 ニホンミツバチは意外なことに、非常に人なつっこい性質をもっています。
 まず、こちらが彼らをたたいたり踏み潰したり危害を加えない限り刺すことはありません。だから、養蜂家は日本ミツバチの場合、網をかぶらず、素顔を素手で巣箱を扱います。巣箱の入り口に静かに指を出していると1匹の斥候役がきて指にとまる。そのまま指を動かさずにいると斥候役が「この人は安全だ!」と羽音で仲間に知らせる。すると、たちまち巣箱全体のミツバチが人の手から腕から全身を包んでしまう。驚いて手で払ったりすると、もうダメ。その人を寄せ付けない。またニホンミツバチは、その鋭い嗅覚で人を識別します。AさんとBさんのにおいのちがいが分かるのです。
 天敵のオオスズメバチと1対1では、小粒ながら敏捷な動きをするニホンミツバチは決して負けてはいない。しかし体重が数倍のオオスズメバチが群れをなして襲ってくると堪らない。こんなときニホンミツバチ数匹が飼い主の腕や胸にとまって救いを求めます。
 「悲しい羽音でやってくるから、それとわかるのです」
と長崎で養蜂歴20年の久志富士男さんはいいます。
 「毛繕いや鬼ごっこなど、日本ミツバチは遊びも知っている。昆虫の中では日本ミツバチが一番利口」「外来種のセイヨウミツバチは何年飼っても飼い主が分からない」。彼らは常に攻撃的で、人との親和性がない。ただ、集蜜量がニホンミツバチより多いため、明治以来ずっとセイヨウミツバチが国内の養蜂の主流でした。が、蜜の質からいうと断然ニホンミツバチのほうが上。濃度が高いのです。そこで近年、ニホンミツバチの見直しが始まっています。
 まさにニホンミツバチは日本人に、セイヨウミツバチは欧米人に似ています。昆虫は、人が考えているより遥かに人との距離が近いのではないでしょうか。
 そういえば、セイヨウミツバチの繁殖にもめげずに健闘しているニホンミツバチのそばで、日本古来のイシガメやクサガメがアメリカ産のカミツキガメの跳梁跋扈に圧倒され絶滅に瀕しているとか、わが国特別天然記念物のオオサンショウウオがチュウゴクサンショウウオの侵入で半減したなどという報道がありました。また中国産の繁殖力旺盛な二枚貝カワヒバリガイや巻き貝のサキグロタマツメタが日本の沿海部に広がり、在来種のアサリやシジミを大量に食い荒らしているとも伝えられています。
 中国といえばシャンハイガニも東北から茨城、千葉の海岸に拡散中だとか。彼らは堤防に穴をあけたり在来ガニの巣を横取りする。
 5年ほど前のことですが、井の頭公園の井の頭池で市民グループが調査のため捕獲した魚の大半が外来種のブルーギル。悪名高い、あのブラックバスもいました、在来種の美しいモツゴはたったの20数匹だけ。
 外来種が在来種を侵食する話は、なにも昆虫や魚介だけにとどまりません。哺乳類から植物まで広範な世界で同じように外来種が「おらが天下」を謳歌する図式が見られます。地震や風水害に見舞われるにせよ、ふだんは温和で美しい自然のなかで、この国の動植物は生き続けてきました。したがって彼らの性質もまた温順、戦闘性は希薄です。砂漠とか寒暖の差の激しい苛酷な土地で生き残った外来種に対してはどうしても劣勢に立ってしまうことになります。
 日本古来の動植物が悲鳴を上げながら、この図式を通して教えているのは、人も、その例外ではないということ。日本人は、いままさに腹をくくって国防問題に真剣に対処しなければならないという警告でもあるのです。