ほのぼのマイタウン 街・家族の活性化を支援します 小平市・東久留米市・清瀬市・東村山市・西東京市を結ぶ手作り情報マガジン

> エッセイ・自分たち探し 目次


もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



「クール・オリンピック」の旗を2020東京五輪に掲げましょう


2020年五輪の東京開催が決まりました。
 その決定の翌日、IOC(国際オリンピック委員会)のロゲ会長が注目すべき発言をしています。記者との1問1答のなかで出てきたことばです。
 「日本の友人は素晴らしい大会を開いてくれるだろう。安全でアスリートを中心に考えた計画に期待したい。〈開催までの〉7年間で大事にことは、まず組織委員会のコンセプトをしっかり決めること。戦略を立案してマスタープランをつくる。IOCは日本とチームワークをすすめるだろう」
 ロゲ氏は、その1両日後に会長を辞任するのですから、これはあとを託す東京へのはなむけのコメント。裏を返せば、ロゲ会長は東京にコンセプトがない、しっかりした戦略を欠いている、ということを指摘したことになる。会長は心配しているのです。東京が「安心、安全」な都市だということはよく分かった。また五輪開催のための潜在能力も高く評価できる。大会運営の能力でも世界的に突出しており、見事な成果をあげてくれるだろう。2020年東京が決まったことに喜びを感じるが、ただ欲をいえば戦略性がない、夢のあるビジョンを欠いている。オリンピックではコンセプトやビジョンは極めて重要な位置を占めるものである。ロゲ会長の真意を、筆者なりに勝手に付度していえば、こういうことになります。
 実際のところ、東京は前回、2016年招致においても、また今回の招致活動においても、一貫して積極的な未来志向の魅力あるビジョンを打ち出せなかった。「安心、安全」などは、開催に名乗りをあげるからには、あまりにも当然な話。東日本大震災を意識した「復興五輪」も国内向けであって、世界のなかの東京が掲げる旗幟としては似つかわしくない。
 五輪招致委員会は東京都庁に事務局を置いています。したがって招致活動を下支えするのは都の職員。つまり役人です。「安心、安全、確実」などというものは、役人的発想。手堅いけれども、夢は、かけらもない。霞ヶ関も西新宿も同じです。そこをトップの政治家がよく理解したうえで、大戦略を打ち出さねばならない。せっかく、石原、猪瀬の両都知事はともに作家です。ビジョン作りにはまたとない、格好の人材。どうして2回つづけてビジョンを欠く招致運動がおこなわれたのか、不思議でなりません。招致の実働部隊である官僚集団に、いつの間にか文化人知事のふたりとも取り込まれた、埋没したということでしょうか。
 では、そのように批判するお前に東京五輪のビジョンはあるのか。あればそういってもらおうではないか当然そういう声が出るでしょう。逃げるわけにはいきません。おこがましいとは思いますが、1、2点申し上げることといたします。まず2020年という時点。21世紀が2割経過しています。文明史的に考えると「感性社会」の到来がいよいよ鮮明になってきます。それを踏まえて「クール・オリンピック」「スマート五輪」の旗を掲げます。日本人は純度の高い美意識の国民。おりしも世界的に「クール・ジャパン」のイメージが広く浸透中。五輪を機会に、分かりにくい日本文化の真のすがたを、かたちを全世界に理解してもらうべく働きかけるのです。
 国内的には、もともとが美意識の民ですから、放っておいてもきれいな、美しい五輪開催をすることはたしかです。しかし、ロゲ会長もいうように「組織委員会のコンセプトをしっかり決める」ことで相乗効果がでる。スローガンは響き合うものです。東京五輪を新しい国づくりの起爆剤にするために、戦略的な旗幟を鮮明にすることはなんとしても必要なことといっていいでしょう。