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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



自国文化中心の目から世界の現実を正しくみる目を


ちょっとむずかしい言葉ですが「エスノセントリズム」というのがあります。ものの本によると哲学用語に分類されていて、「自民族中心主義」と訳されている。ただ、この訳語では、イマイチよく分からないところがあります。
そこで先日、大型の図書館にでかけてコンクリートブロックのような大きな重い辞書で調べてみました。するとありましたよ、エスノセントリズムとは「他民族やその文化を自己の文化を基礎に判断する傾向」。これなんです、いま世界を覆っている流れはー。
中国・雲南に西双版納(シーサンパンナ)という地域があります。そこはブタだらけの村がいっぱい。農家はみなブタを飼いますが、飼い主からあふれでたブタが野生化し、村の至るところで自由奔放に生きている。村に市が開かれると人が買い物をするように、ブタもやってきて食い物をあさるのです。日本の女流カメラマン、Tさんは、なぜかそんなブタに魅せられ現地に長期滞在して撮影に精をだしていた。ある日、村の古老がTさんに話しかけます。
「東京にはブタはどのくらいたくさんいるのかね。えっ、いないっ!日本は豊かな国だと聞いていたが、実際は貧しいんだな。そうか、だからあんたもそんなに痩せて細い体なんだ(Tさんは、スリムなボディが自慢なんですが)。かわいそうに、うちの村でしっかり食べて太って帰りなさいよ」
これは素朴なエスノセントリズムですが、3・11東日本大震災の被災者が九死に一生のなかで整然と、お互い助け合いながら生き抜く姿をみて、中国の有名なメディアが「あれは教育の効果」と書いた。彼らにしてみれば北京五輪の前、「行列に割り込むな、路上でツバを吐くな、裸で街歩くな」と巨額な費用を投じて大キャンペーンを繰り広げた。それによって五輪はまあまあ無事にすませた。その経験からのエスノセントリズム。しかし東北の被災者は別段「略奪するな、暴動するな」と教育を受けていたわけではありません。日本人の背骨にある生来のDNAが世界を驚かせるような整然たる避難を生んだのです。
一方、アメリカー。安倍首相が集団的自衛権を導入したい、憲法を改正したいなどというと「日本が右傾化している」と騒いでいます。以前から米国の一部に、「原爆を落とされた日本は、いつかアメリカを報復攻撃する」といった声が絶えません。そのために米軍基地を置いて日本の軍事力台頭を抑えねばならぬと、いわゆる「ビンのふた論」がまかり通ってきました。逆に自分たちアメリカ人が原爆を投下されたら必ず報復するぞ、と宣言していることにもなりますが、これはまさにエスノセントリズム以外のなにものでもない。
かくいう日本はどうか。少しばかり米中とは趣がちがいますが、やはりわが国なりにエスノセントリズムという業病に取り憑かれている。日本人は、総じて性善なる民族です。だから世界中がみな性善だと思っている。この世には性悪(しょうわる)な民族など存在しないのだと。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と憲法に明記し、それを70年近くも金科玉条として大事にしてきました。自分たち日本人が引き起こさない限り戦争はないのだと信じている。
せっかくグローバリズムの21世紀が到来しているのだから、人間のリアリズムを無視した理想やイデオロギー、自国中心のワクから脱して、世界大の目で各国の文化や民族性を正視するようにしたいものです。また世界には、残念ながら根っこから性悪な民族が存在している。それから目をそらさずしっかり備えることも、日本にはとくに欠かせない課題だと思います。