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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



猛暑の季節です 「水の話」はいかがでじょうか   


フランスから日本にきて、フランス料理をつくっているシェフのなかに、野菜をフランスから空輸して取り寄せている人がいます。「日本の野菜は水っぽくて、フランス料理には使えない」のだそうです。
ポリエチレンで包装紙をつくっている会社ではこんな話を聞きました。「日本ではせんべいなど1枚1枚包みますね。放置したら、すぐしけてパリパリ感がなくなるからですが、外国では反対に放置したら乾燥してカチカチになってしまうので包装するのです。」日本の大気も水っぽい、つまり湿度が高いわけです。
コメにジャポニカ米とインディカ米のあるのはよく知られていますが、インドあたり、あの乾いたインディカ米のご飯を炊くとき、途中でわざわざ大量の水を注いで粘りを洗い流します。可能な限りパサパサしたご飯にする。それが喜ばれるわけです。日本では粘りのないパサパサしたご飯など、だれも見向きもしません。もう20年ほど前になりますが、日本に備蓄米が急減して、政府がタイ米を緊急輸入したことがありました。が、ひどい不人気で捨てる人もいたほど。水分の乏しいコメは受け付けないのが日本人です。
野菜もコメも水気が多いのであれば、この日本列島の人間も水っぽいということにならないでしょうか。欧米では60歳代、70歳代になると皺まみれになって、叱られるかもしれませんが、干し肉みたいと表現したくなるような老人が多い。しかし日本では高齢になってもみずみずしさを保った人が少なくない。実際、世界トップクラスの長寿国でもあります・・・。
1960年代のことですが、映画館の前に「3倍泣けます。母ものの決定版」と書かれたポスターが貼ってありました。その映画館は「どうぞ、気のすむまで泣いてください」と訴えているのです。そのころは、まだテレビの普及前で、母もの映画はヒットの連続。みんな泣くために金を払って見に出掛けたのです。日本人は、声をあげての号泣こそしませんが、ちょっと感動したら、ちょっと感極まったら、落涙する。国際的にみて日本人の涙腺は太いとか、もともと日本人は水っぽい体だとか、そんな人体組成の研究はまだないようですが、少なくとも文化的には日本人は水っぽいということができるような気がします。
そういえば、日本文化はウェットの文化だ、とする見方がむかしからあります。欧米や中東のようにドライな文化ではない。ブタの丸焼きを店頭に並べる肉屋さんは日本にはいないし、首の動脈を切断し血しぶきをあげるような殺人事件はこの国では起こらない。近年、殺伐とした空気がわが国にも広がり出しましたが、それでもユーラシアの多くの人々からみれば治安がよく、うるおいに富んだ国なんです。
ところで水には硬水と軟水があります。カルシウムとマグネシウムの濃度が高いのが硬水、低いのが軟水。軟水のほうがまろやかで口当たりがよく、飲みやすいといわれています。ユーラシア大陸の水は硬水、日本は軟水。降った雨がすぐ海に流れてしまう地形で、火山が多く土壌が酸性、カルシウムなど金属類の含有が少ないのです。
また日本海側の大豪雪地帯は世界的にみても珍しく、「シベリアの積雪でも、1メートルを超える場所はほとんどなく、大抵は数十センチ」(水研究の沖大幹氏)とのこと。この「白いダム」は今後、東南アジアなどからの観光客を呼ぶ格好の観光資源になるはずです。
いずれにせよ、日本人は世界のなかの変わり者ですが、日本の水も国際的にみて変わり者。いや、変わり者の水に育てられたからこそ、日本人も変わり者になったということかもしれません。

こくまい・かきぞう  元産經新聞記者・東久留米市在住