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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



多層構造の心情をもつ日本人は世界でも少数派   



「予想とちがって日本には美人が少ないなあ」「少ないねぇ」電車のなかで韓国の若者がふたり。韓国語は車中のだれも分からないと思っているようで、彼らは声を落とすこともなく話しています。しかし、すぐそばに在日韓国人がいて、「あのふたり、日本は絶世の美人ばかりと思ってやってきたんだね」と、こちらは日本語でつぶやき笑っていました。
韓国は名にしおう整形大国。若い女性の多くが整形ずみだといわれています。派手に繕った整形女性を大勢並べて遠目で眺めると、みな同じような顔にみえる。そんな女性ばかりを見慣れた目で日本にくると、かなり雰囲気がちがいます。まず、日本では整形する女性は少ない。それにもともと容貌が多様で、大和撫子には、昔から蔭、陰影というものがある。現代っ子の明るい人でも、よくよくみると、たいていなにがしかの陰を秘めているものです。
「いま下関にきた。すぐきてよ。今夜、一緒に飲もう」
韓国から来日した男性が、東京の日本の友人にいきなりこんな電話を寄越したりする。韓国には無遠慮も親しさの証明といった考え方があります。また、おかしいときは心から笑う。悲しいときは大声で泣く。腹が立ったら、"火病"といわれるように辺りかまわず喚き叫ぶ。喜怒哀楽をストレートに、強烈に表現するのを美徳としているのです。その一方で、産経新聞ソウル支局の黒田勝弘記者が「韓国人と前夜はげしい論争をして、翌朝顔を合わすと、こちらはまだ前夜のしこり残っているのにケロッとして爽やかに挨拶してくる」というようなことを書いていましたが、文字通り朝鮮の「朝の鮮やかさ、爽快さ」を尊ぶ気風もあります。要するに韓国人は陰影など無縁、率直明快、単層の心理構造になっている。
これに対して日本人の心情は複層、多層構造。たとえば職場で、自分の家庭内のことはあまり話さない。長い付き合いで、相手が年齢からいって当然妻帯者だと思っていたら、実は独り者だったなどということがあります。また自分の趣味生活についても、通常、公の場では打ち明けたりしない。アメリカ人でも韓国人でも、自分を知ってもらうため、積極的に私生活を面白おかしく披露する光景をよくみかけます。が、日本人の場合は職場第一、みんなと"和する"ことをすべてに優先させ、私的なことにはあえて触れません。
その趣味生活ですが、これがまた多彩。正月のしめ縄に魅せられて30数年全国を飛び歩く人。電車の吊り革が面白いといって国内ばかりか海外まで調査に出かける人。手袋の、忘れられた片方だけにほれ込んで4千枚収集した人。農村の柿や大根、芋などの天日干し風景がすごいと40年以上も写真を撮り続けた人。水道の蛇口にはまって3千種を分析、解説本を自費出版した人。穴をあけてそこに顔をはめるパネル、あれ「顔ハメ」というのだそうですが、その研究に夢中になった人。SL列車に大勢集まる「撮り鉄」は有名ですが、鉄道ファンの変種も多い。本線から分かれて短区間を走る"盲腸線"に凝ったり、森林鉄道に乗るのを生き甲斐にしたり。駅ソバの食べ歩きや切符、汽車土瓶集めに懸命になる人もいます。ま、多士済々というべきか、奇才、異才の百花繚乱というべきか。職場では平凡人を装いながら水面下では独特の世界をつくっているケースが無数にあるのです。
世界的には単層派の民族が多く、多層は少数。欧米人がよく「中国、韓国までは分かる。が、日本人となるとむずかしい」といいますが、グローバル化がすすみ訪日客がどんどんふえて、むずかしい日本人の本質が、より正確に理解される日のくることを期待しましょう。