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TAMA団塊100

アートはまちにどんな未来を描けるか

アートプログラム青梅 代表 原田 丕 さん(60歳)

永く美術教育現場にたずさわり、心豊かな未来を願って子どもたちの成長を美術というフィルターごしに 見つめてきた。
在職中の2000年、教育現場の枠をこえて「多摩Artist Citizen NetWork」(TACネットワーク)を組織し、多摩在住の現代作家50人とともに市民との対話交流を図り、「接近」展や学校美術館、アーティスト交流授業などさまざまな試みに取り組んだ。 きっかけは1996年、文化庁期間在外研修員としてのドイツ滞在。
「敗戦後同じように経済発展をとげた国なのに、社会における芸術文化のあり方に 大きな違いがあることを肌で感じてがく然としたんです。」
ドイツは復興期に芸術文化の社会的役割を認識し、美術環境を整備するとともに 若い世代の育成を行なってきた。
長い時間をかけ芸術文化の土壌は熟成され、 いま人びとの暮らしの中に根付いている。
経済原理が優先され、社会に大きなゆがみを生じ、未来に不安を抱えているこの国との差違。
「人々の暮らしの中に本来の心の豊かさを取り戻すために、芸術文化の果たす役割は大きいと思うんです。
子どもたちや若い世代はもちろんですが、世代を越えて身近にアートにふれる喜びや感動を共有すると いうような仕組みづくりがいま必要です。 それがひいては地域づくりの再生にも繋がっていくんじゃないでしょうか」

2003年にスタートした「アートプログラム青梅」は、昭和初期の建物や町並みが残る 青梅市街を会場に、多摩地域をはじめ内外で活躍する現代作家と多摩地域の4つの美術大学の学生 によって、現代美術やシンポジウム、ワークショップなどを展開、 市民参加型のアートイベントとして定着している。

「多摩地域は豊かな自然環境の中に美術館などの文化施設がずいぶん整備されました。 美術大学や作家や若いアーティストも多い。学校教育との連携も含めさまざまな機関が ネットワークを組んで、市民と一体になった地域づくりが実現できればこの 地域は芸術文化の一大発信地になると思います。そのポテンシャルを十分に秘めていますからね。」

子どもたちやまちの未来を見すえてひとりのアーティストの挑戦が続く。

(写真は林田直子さんの青梅市でのワークショップ。左上が原田丕さん)

(文・ウォーターパス)