ほのぼのマイタウン 街・家族の活性化を支援します 小平市・東久留米市・清瀬市・東村山市・西東京市を結ぶ手作り情報マガジン


多摩をつなぐ


 千年に一度と言われる未曾有の東日本大震災。被害の甚大さが広範囲にわたり、原 発問題を含め未だに復興の道筋は不確か。そして決して他人事ではない。一方、心温 まる支援活動や現地の人たちの節度ある行動、ひたむきさは、世界的に注目され、 我々日本人が誇れるものともいえる。
 新年度「東京TAMAタウン誌会」では、多摩地域の支援活動や防災活動に目を向 け、紹介する中に地域の絆や防災へのキーワードを見つけ出してみたい。



災害に備える地域づくり
独立した市民ボランティアが緊急時には一致団結り
福生ボランティア連絡協議会(福生市)

新潟県中越地震の際の炊き出し支援風景
 東日本大震災から3か月。被災地と地元(福生)避難者への両面で支援を続けてい る市民団体のひとつに福生ボランティア連絡協議会(秋山美左江代表)がある。「被 災地の支援ニーズは現在も日々変わっています。仲間からの連絡を迅速に地元のボラ ンティアに伝え、無理なく息の長い支援をすることが大切な仕事です」と秋山代表。 同協議会は約30団体が、日頃は単独で様々な市内ボランティア活動を展開し、いざと いう時には協力して災害支援や防災訓練などを行う。老若男女、声がかかるのは延べ 400人にも及ぶ。この日も同市福祉センターに集まったメンバーは、農協の女性 部、市内在住の外国人支援団体のメンバーなどさまざまだった。

 震災直後は4人の仲間が岩手方面へ出発し、行政の支援が届きにくい地域を重点的 に回った。岩手県和泉地域からの情報が、協議会の主要ボランティア団体に伝わると 義援金はもとより、当時不足していた運動靴があきる野市の都立秋留台高校から数百 足集まった。支援物資の中には、曜日感覚が薄れてしまった避難所に必要なカレン ダーの手配など、きめ細やかな支援が始まっていた。  一方、同市には被災地から避難する家族もあり、福祉センターに避難した人たちへ温 かい夕食が協議会のメンバーによって用意された。ピーク時では妊婦を含む13人がお り、被災の不安を一時でも癒してあげたいとの気持ちから『おふくろの味』が、3月 20日から31日まで食卓に並んだという。

 同協議会が防災支援活動を本格的に始めたのは平成10年。偶然「防災について」の 講演会を聞いたことが始まりだった。講師を務め、今も協議会で活躍する角田四郎さ んの阪神淡路大震災(平成7年1月17日)でのボランティア経験談への共感が協議 会の各団体の結束を高めた。その後「避難した人の気持ちになってみよう」と始めら れた、野外キャンプ実習は、初回から1週間のハードなもの。ここでの経験をさらに 地域に広げよう、と同市中央公園での市民対象の体験キャンプ(5泊6日)は、恒例と なり十数回も開催している。

 協議会の活動が大きな力を発揮したのは平成16年。新潟県中越地震(平成16年10月 23日)の支援時だった。野外キャンプの経験を生かして約10回の現地支援が繰り返さ れ、時には30人のメンバーが現地に向かい、炊き出しや支援物資の搬送を行った。 「被災地域との信頼関係をどう作るかが、混乱する現地では大切。せっかくの支援の 気持ちが活かされないこともあることをわかった上で、被災地に向かいます」と秋山 代表は話す。心を開いた被災者の何気ない言葉をくみ取って、初めて支援の行動が形 にできる経験を協議会のメンバーは身にしみて知っているのだろう。

 「冷たい体育館の床に寝させるのは忍びない」と思えば130枚の畳を揃えて搬送 し、「子どもたちが甘い物を望んでいる」となれば、たい焼き機が炊き出しのテント に陣取る。午前5時に福生を出発して午前9時に被災地の池ヶ原避難所に到着。準備 をしていた食材を一気に料理してあっと言う間に200人分の食事を用意した。その後 ボランティアのオジサン、オバサンが自分たちで適当な場所を見つけ、当たり前のよ うに自前のテントで休む姿を見て現地の関係者は唖然としていたという。

 そんな支援活動の報告は、その後『哀しみをみつめて』という一冊にまとめられ た。同書のあとがきには「現地に行く者、事情があって地元に残る者、裏方を含めた 支援者全ての気持ちがあって活動ができた」と記されている。

 「私たちは、お客さんじゃない。行く以上は役に立つひとつのチームとして機能し なければ意味はない」という秋山代表のたくましい言葉は、自分たちも被災者の立場 にいつ成るかわからない、そんな時に備える地域の一員としての責任を感じさせるも のだった。「震災にあって行政が機能するまでの数日は、市民の力が全て。少しでも 地域の連携を広げ、いざという時に力を発揮できる団体でいたい。そのためには日頃 の関係作りが大切」とメンバーは口を揃える。今年も6月18日には市内で活動するボ ランティア団体の井戸端会議が福生市福祉センターで開催され、連携を深める。意見 交換では震災支援の話題に花が咲く。

所在地:福生市福祉センター内 042-530-2941

(取材:株式会社 西多摩新聞社)