ほのぼのマイタウン 街・家族の活性化を支援します 小平市・東久留米市・清瀬市・東村山市・西東京市を結ぶ手作り情報マガジン


多摩をつなぐ


 千年に一度と言われる未曾有の東日本大震災。被害の甚大さが広範囲にわたり、原 発問題を含め未だに復興の道筋は不確か。そして決して他人事ではない。一方、心温 まる支援活動や現地の人たちの節度ある行動、ひたむきさは、世界的に注目され、 我々日本人が誇れるものともいえる。
 新年度「東京TAMAタウン誌会」では、多摩地域の支援活動や防災活動に目を向 け、紹介する中に地域の絆や防災へのキーワードを見つけ出してみたい。



多摩交流センター・東京TAMAタウン誌会共同企画記事


地域防災ネットワーク
中野町甲和会(八王子市)

八王子市中心部から北西約5キロに位置した中野町。 主に一戸建て住宅が建ち並ぶ閑静な住宅地にある自治会組織「中野町甲和会」が、 3年前から工学院大学との恊働で地域防災対策に取り組んでいる。

町会と大学の恊働で作る「地域防災マップ」


防災マップ作り
「この防災マップは学生たちと一緒に作り上げました」
 地域の防災活動が楽しく継続出来るのは「学生たちのおかげ」と、町内にある工学院大学と協力しながら防災対策を推進する中野町甲和会。学園都市八王子市の特性を活かした大学との協働が成果を上げている。
 町会の様々なイベントにも積極的に参加する学生たち。住民たちも大学キャンパス内での地震防災訓練への参加をとおし、親と子、孫のような繋がりが出来上がっている。学生から招かれて催すバーベキューも毎年恒例の行事となり、防災面だけではない良好な関係が続いている。
 甲和会と工学院大学との交流は、平成20年4月の新入生オリエンテーションに住民が参加し、学生と共に学内点検マップを作成、発表したことから始まる。7月には同大学工学部の村上正浩准教授を中心に、建築学を学ぶ学生たちと、地元町会「中野町甲和会」(約700世帯)を一緒に歩きながら地域を点検した。

大学、行政、住民の恊働による地域防災活動は
積極的なコミュニティ活動から

 目的は「地域防災マップ」を作成することだった。地域を6ブロックに分け、歩いて見ると、町内の防災上の問題点が多々あることに気付く。
 良い点は、「学校、スーパーなど災害時に活用できる場所が多い」「避難場所や消火器などの防災資源や備蓄倉庫が多い」。注意すべき点は、「道路幅が狭く、行き止まりや急な階段が多い」「木造住宅や古い建物が多い」「高速道路に大きな被害があった場合、道が遮断されるおそれがある」等々。これらを写真に収め、住民へのインタビューから得た情報等を整理し、学生がパソコンで作成した。
 さらに、マップ作りに参加した住民の防災意識は高まり、いつ起こるかわからない災害を最小限に食い止める防災対策が必要と、防災マップを挟み込んだ冊子「防災への備え」を発行、住民に配布している。いつでも追加、修正に対応できる差し替え可能な製本にするなど、創意工夫を凝らした。



高齢者を支えるネットワーク作りを推進「さくらんぼの会」

 
 中野町に自治会組織「甲和会」が設立されたのは昭和35年6月のこと。自主防災組織も結成され、区域内にある小・中学校を拠点に防災訓練を実施するなど、住民によるコミュニティ活動が盛んな地区である。
 しかし、平成16年新潟県中越地震と平成19年新潟県中越沖地震をきっかけに、自分たちの街が大地震に襲われた時、現状の防災対策で対応できるのか不安を感じていた。そんな時、八王子市防災課より都市工学の見地から地域防災に関する研究をすすめている工学院大学建築学科村上研究室を紹介され、「地域防災マップ」作りに取り組む。その体験から、住民同士の「顔が見える関係」をつくることが、地域防災には欠かせない要素であると学んだ。
 その住民たちの「思い」は、要援護者の支援を進めるボランティア組織「さくらんぼの会」発足へと発展している(平成21年)。会員は現在53名、高齢者宅の巡回軒数は延べ224件(平成23年震災避難訓練において)にのぼる。
 さくらんぼの会会長の今井数眞さんは「支援を希望される高齢者のお宅に3名の会員が連携して、様々な依頼に対応しています。今後は、車いす介助の研修や、火傷・止血処置など家庭での応急処置の仕方等、住民同士が支え合うネットワーク作りを広げ、楽しい活動として続けていきたい」と言う。
 地道なコミュニティ活動が、地域の防災対策の要であることを教えてくれる「中野町甲和会」の取り組みは、消防庁の優良事例として紹介されている。

■中野町甲和会 連絡先:町会長 岩出 實 042-622-3961                       

(取材・週刊もしもししんぶん)