ほのぼのマイタウン 街・家族の活性化を支援します 小平市・東久留米市・清瀬市・東村山市・西東京市を結ぶ手作り情報マガジン


多摩をつなぐ


 千年に一度と言われる未曾有の東日本大震災。被害の甚大さが広範囲にわたり、原 発問題を含め未だに復興の道筋は不確か。そして決して他人事ではない。一方、心温 まる支援活動や現地の人たちの節度ある行動、ひたむきさは、世界的に注目され、 我々日本人が誇れるものともいえる。
 新年度「東京TAMAタウン誌会」では、多摩地域の支援活動や防災活動に目を向 け、紹介する中に地域の絆や防災へのキーワードを見つけ出してみたい。



障害者と健常者の垣根を外し「心のバリアフリー」をめざす
視覚障害者と健常者とのイベント・レクリエーションサークル「ウイングス」(福生市) 

ウイングスのメンバー
(前列右から2人目が柿崎さん、
その右隣りが渡辺武松さん)
障害者と健常者が一緒になって”心のバリアフリー”を広げていこうと、それぞれの特技を活かし、パソコン、講演会、コンサート、料理、カラオケ、旅行などさまざまな活動を展開する「ウイングス」。14人のメンバーのうち9人が視覚障害を持ち、そのほとんどが中途失明者だ。
代表の柿崎ひとみさんも網膜色素変性症(*)にかかり、10年ほど前に失明した。失望し外出する気にもなれなかった。そんな柿崎さんを介助していた人から同じ病気の患者会「友達の会」を教えられて参加してみると、皆元気で明るかった。「同じ状況の人がいた。自分一人ではなかった」と気持ちが落ち着き、楽になっていった。
「ここで同じ病気で中途失明にも関わらず、料理作りや旅行などを楽しんでいた渡辺武松さんと出逢ったことが、自分を一歩前に押し出してくれた」と語る柿崎さん。
集える場を自分の地域でも作りたいと、5年前に視覚障害者交流サークルを発足。その後、健常者との交流も加えた「ウイングス」を創設。ウイングスは翼の意味で、健常者と障害者が両翼になってどこでも飛んでいけるという思いが込められている。
 副音声機能を使って視覚障害者と健常者が一緒に映画を鑑賞できる上映体験会や、渡辺武松さんが教える料理会を開催し、「目が見えなくなっても諦めないで、工夫をすれば皆で楽しめる」と障害者にもエールを送る。
ライブ活動では柿崎さんが司会、ボーカルは山屋晃さん、音響を田中たけしさんは皆障害者で、ギターは健常者の田中主計(かずえ)さんと、お互いの得意分野を活かし楽しく活動している。今年の夏には皆で新幹線に乗り、関西に旅行に行った。アメリカやオーストラリアなど海外に旅行したメンバーもいる。
健常者のメンバーたちは「こちらが何かしてあげるという感じではなく、一緒に行動することでパワーをもらっています」と笑顔で話す。そこには障害者、健常者という垣根を越えた仲間のつながりがあった。
多摩地域を中心に活動を行い、ホームページ(HP)を通じ、その様子を紹介している。HPを作成する鈴木貴士さんは大阪在住で、会のITサポートを一手に引き受けている。パソコン画面がほとんど見えないため、勘と音声ソフトを頼りにHPを作り、音声でも楽しめるようにDJ風に演出の工夫をしている。メンバーたちは「目の見えない人が作ったみんなが楽しめるHP。ぜひ覗いてみて」と呼びかける。
また、今年は学校講演会の依頼が昭島市など4件あった。柿崎さんは「子どもたちに、障害があっても元気で活動している姿を見てもらいたい。そしてその子どもたちが大人になった時、本当の意味での心のバリアフリーが実現する世の中になって欲しい」と願いを込める。
メンバーたちはスカイプ機能(無料のインターネット電話サービス)や電子メールを使い、教え合ったパソコン機能を駆使しコミュニケーションを取っている。「IT機器が発達し、障害があっても不便なく過ごせるようになりました。こういった機器があることも伝えたい」とHPや講演会で、視覚障害者が使う音声生活機器などを紹介している。
「見えないことは不便ですが、不幸なことではありません」とIT機器を活用し、見えるとき以上に多彩な活動を繰り広げている。

*網膜色素変性症(もうまくしきそへんせいしょう):長い年月をかけて網膜の視細胞が退行変性していく疾患。

ウイングスのホームページ
http://www.eonet.ne.jp/~t-suzu-0710
連絡先:090-7732−3447 (柿崎)

(取材:西多摩新聞社)

多摩市視覚障害者福祉協会(多摩市)
オフィシャルサイト
連絡先 布施千鶴子
TEL・FAX 042-376-2035

多摩市内に住む視覚障害者が、地域でいきいきと暮らせる環境づくりを目指す活動を推進。自立保障制度の推進や、音声によるパソコン操作の講習会、盲導犬などの普及活動を続けている。「歩こう会」などの部会活動を定期的に開催。、「ソシアルダンス」「水中運動」「ゴルフ」「マラソン」「カラオケ」「陶芸」などのサークル活動も活発に続けている。
ガイドヘルプ・ボランティア「あい」(小平市)
TEL 042-344-9571 会長 中野秀香  

平成7年より視覚障害者に行政制度の対応外の外出支援を開始。当初より障がいがあってもなくても共に会員となり、ボランティアを目指して社協団体となる。教育委員会との連携による総合的学習の中で、児童生徒の豊かな心を育てる福祉体験学習に年間を通じ参加。アイメイト(盲導犬)育成支援活動もその一環である。