多摩をつなぐ
千年に一度と言われる未曾有の東日本大震災。被害の甚大さが広範囲にわたり、原
発問題を含め未だに復興の道筋は不確か。そして決して他人事ではない。一方、心温
まる支援活動や現地の人たちの節度ある行動、ひたむきさは、世界的に注目され、
我々日本人が誇れるものともいえる。
新年度「東京TAMAタウン誌会」では、多摩地域の支援活動や防災活動に目を向 け、紹介する中に地域の絆や防災へのキーワードを見つけ出してみたい。
新年度「東京TAMAタウン誌会」では、多摩地域の支援活動や防災活動に目を向 け、紹介する中に地域の絆や防災へのキーワードを見つけ出してみたい。
多摩交流センター・東京TAMAタウン誌会共同企画記事
コミュニティ通訳―外国人住民の強い味方東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター(府中市)
東日本大震災発生後、外国語の専門家が災害情報、放射線被ばくに関する基礎知識、入管情報を22言語に翻訳してネットで情報発信。地域に住む外国人や海外在住の日本人、外国人に喜ばれた多文化社会の専門人材が今、平時の活動を通して緊急時に備える。
マイノリティ言語の翻訳に多くの需要
パネルディスカション(2011年11月26日)
「東日本大震災―その時、現場で何が起こったか」
東京都在住のインドネシア人の知人をもつ日本人から「インドネシアの国営放送では『放射能は10時間で東京上空に到着する。人体に影響がある量である』と報じられたらしく、国の親御さんたちがパニックになっています。こんなとき、少しでも母語の情報が安心材料になるのでは、と思います」というお礼のメールが来た。
また、被災外国人のための電話法律相談・トリオフォン通訳でも協力し、労働問題、在留資格、帰国、離婚など幅広い内容の相談に応じた。中心となって活動したのが、東外大の教職員、大学院生、卒業生からなる言語ボランティアと、多言語・多文化社会専門人材養成講座のコミュニティ通訳コース《定員20人》の出身者だった。同コースの今年度の募集は終わったが、毎年6月に受講者を募集。8月から9月にかけてコミュニティ通訳概論や演習、行政・教育分野、司法分野などの専門科目を学ぶ。対象者は外国語の語学力があり、自治体、学校、国際交流協会などで外国語相談や通訳など、現場の実践経験がある人。
昨年11月に東外大で開催された全国フォーラム「多文化社会に求められる専門人材像−東日本大震災から学ぶ―」において、青山亨センター長は、多文化社会に求められる専門人材像の追求は重要課題とし、「これは災害時における外国人に対する支援活動と密接につながっていると考えます。今回の震災支援を通して、多言語・多文化社会に求められる専門性をもった人材が平時から活動して、専門性と力量を高め、互いに顔と顔の見えるネットワークを築くことができてこそ、緊急時の状況にも迅速かつ的確に対応できると考えるからです」と語った。
平時の活動〜「リレー専門家相談会」
東京外国語大学 多言語・多文化教育センター長
青山 亨教授
各市町村にある国際交流協会などでは、地域によって差はあるが、日ごろから同じ地域の住民、仲間として外国人と向き合い、こまめに交流を深め、支援を行っている。英語を中心とする語学ボランティア、各種の文化交流、外国人のための防災委員会、避難訓練、外国人小中学生学習コースサポーターなどの日常の活動が、多文化時代の地域に住む外国人にどれほどの安心感を与えているかは想像に難くない。東外大の通訳・翻訳支援は、その専門性と言語数で、多摩地区の各国際協力団体への貴重な支援となっている。
コミュニティ通訳論が専門の東外大内藤稔特任講師は話す。「定住外国人の増加に伴い、日本社会の多言語・多文化化が進む中、行政、教育、医療、司法等の分野で、言語・文化的なマイノリティとしておかれている人たちを、通訳・翻訳面から支援し、ホスト社会につなげる『橋渡し役』を務めるコミュニティ通訳へのニーズが高まっています。そのため、
コミュニティ通訳コースでは、コース修了後も豊富な実習の場を提供し、またコミュニティ通訳協働実践型研究会への参加を通し、通訳者としての役割を理論的にも議論しながら、力量を形成していけるような仕組みを設けています。ひとりでも多くの方がコースを受講し、それぞれの地域において『橋渡し役』として活躍していただくことを望んでいます」
東京外国語大学 多言語・多文化教育研究センター рO42−330−5455
(取材・ふちゅうファミリープラザ)