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もう一度読みたい【エッセイ・自分たち探し】
 フリージャーナリスト 國米 家己三さんのシリーズエッセイ



わが国は「おもてなし超大国」といっていいのでは…

 
 「日本経済において、国内総生産(GDP)に占める広義のサービス産業の比率は75%に達する」
 最近、ある京大教授が小論文の中でこう書いていました。
 つい20数年前、わが国のサービス産業は他の先進国なみに、まだ全体の30%台を占める程度でした。それが現在75%。急拡大して、いまや日本経済の主役の座にしっかりすわっているのです。
 サービス産業はその内容から「おもてなし産業」といっていいと思います。また、サービスの質は感性が決め手になるところから「感性産業」と呼ぶこともできるでしょう。日本は、その「おもてなし」と「感性」では世界1級の国。そうした持ち味を近年、とくに21世紀に入って遺憾なく発揮しはじめたということです。
 一般的にサービス産業は小売、卸売、飲食、交通運輸、観光をはじめ、医療、福祉、教育、さらには金融、証券、通信、情報なども含まれるとされます。しかし、よく考えると農業も「おいしいおコメ」「きれいなリンゴ」づくりに懸命。製造業も高画質のテレビを世に送ることを競い合っている。いずれも最終的には消費者へ質の高いモノづくりの結晶を提供してサービスに努めるのが仕事です。
 実際、トヨタ自動車は12年前に「おもてなし」と「やすらぎ」を「Jファクター」と称して車の開発の基本理念にすえると表明しました。その直後、京成電鉄が東京都心―成田間を走る特急「スカイライナー」の新型車両のデザインを山本寛斎氏に依頼。同じころ武骨な工作機械メーカーまでもデザイナーを起用してマシニングセンターを美しい外観にしました。
 一方、産業とはいえないが、お役人たちも国であれ地方自治体であれ、「現代は行政サービスの時代」といって国民、住民への奉仕に腐心している。自衛隊も災害出動を通して被災地の救済に立ち上がります。さらに科学者。iPS細胞でノーベル賞を受賞した山中伸弥・京大教授は「患者さんのために1日も早く万能細胞を届けたい」が口グセ。昨年、ノーベル物理学賞を受賞した天野浩・名大教授も「人類の幸福に貢献できると思うことが研究の原動力でした」と繰り返し語っていました。またトヨタの話になりますが、ごく最近世界初の水素走行の燃料電池車に関する6千件近い特許を内外に無料で開放すると発表。数十億円、いや基本的なものを加えたら数百億円にもなるかという研究費を投じた成果を惜し気もなくライバルに自由に使ってほしいと差しだす。地球環境を考慮した「おもてなし」と「やすらぎ」の追及にちがいありません。このようにみてくると日本にはサービス以外の仕事はないと思えるほど。それくらいわが国は「サービス大国」「おもてなし超大国」なのです。
半面、日本のサービス産業の生産性は国際的にみて極度に低いことを憂慮する学者がいます。「その労働生産性(賃金)は米国の半分以下」だと。むろん、半分以下でいいわけはありませんが、例えば温泉旅館。人手を減らせば生産性はあがります。しかし顧客への徹底した細やかな心くばりを生かすには人手は十分でなければならない。生産性や利益を犠牲にしてでもサービスの質を重視して真剣に心を砕く。これこそがまさに、わが国が「おもてなし超大国」であることの証明なのです。
 2013年9月、アルゼンチン・ブエノスアイレスのIOC(国際オリンピック委員会)総会で、東京五輪の招致を訴えた滝川クリステルさんが日本では落した財布が必ず持ち主のもとに戻ってくると「お・も・て・な・し」についてスピーチしました。これは結果的に世界に向かってのわが国の「おもてなし国家」宣言でした。新しい時代到来のアピールでもあったと思います。